地域金融の原点はここにある!-信用金庫のNPO化の可能性




みなさんは、6月15日が1年に一度の「信用金庫の日」だということを知っていますか?
これ、知られていないんですが、「信用金庫法が誕生した日」なんですよ。

信用金庫法は、昭和26年6月15日に公布・施行された「信用金庫」のカタチを定めた法律。
第1条には、「国民大衆のために金融の円滑を図り、その貯蓄の増強に資するため、協同組織による信用金庫の制度を確立し、金融業務の公共性にかんがみ、その監督の適正を期するとともに信用の維持と預金者等の保護に資することを目的とする」と書かれています。

信用金庫違い

銀行は株式会社ゆえ、株主の利益を優先する「営利組織」である一方、信用金庫は協同組合組織であり、「非営利組織」です。
また、信用金庫は、「地域で集めたお金(預金)は、地域でしか使えない(融資できない)」制限がある組織でもあります。つまりは、地域内の“金融の円滑化”を図ることを求められているわけですね。これは、貸出金利で利益を生み出す以上、地域との共栄共存なくして、信用金庫の未来はないことも意味しています。

先日、お世話になった信用金庫の時代の支店長が退職され、以前、僕に宛てて以下の「記事」をお渡しいただいたことを思い出しました。
今読むと、ものすごく納得な「記事」。なぜに僕に渡したのかは定かではないのですが、「変えて欲しい」という気持ちを託していただいたのかもしれません。

信金は、いつしか協同組織金融機関としてのアイデンティティを捨て、銀行と同じようなビジネスモデルで競争している。「効率化」や「選択と集中」という名の下に行った集金事務の合理化や大口融資への傾倒といった動きにより、信金の力の源泉だった「足で稼ぐ営業」や「顧客とのきめ細やかなコミュニケーション」は見る影もないところが多い。
同じ土俵で競争しても規模や人材で劣る信金はじり貧であり、再び銀行との差別化を図ることが急務である。その方向性としては、「協同組織金融機関の原点回帰」がよく言われているが、単純に元に戻れば済む話ではない。協同組織金融機関のアイデンティティのうち、中小企業専門金融機関性や地域金融機関性については、リレーションシップバンキング推進の動きの中で「銀行との違い」ではなくなっている。
銀行との差別化を図る鍵はNPO化の推進である。従来のリスクとリターンの2次元ではなく、地域社会や人への貢献という第三の尺度を明示的に取り入れ、そうした三つの柱に基づいて活動し、出資者と顧客に評価してもらう仕組みを構築するのである。
銀行でも社会的責任や地域貢献をアピールする傾向が一段と強まっているが、株式会社には自ずと限界がある。信金は、その協同組織性や伝統を背景に、銀行には真似できないほど踏み込んだ形でNPO化を実現できる。そうすれば、銀行は信金と競争するのではなく、社会貢献をアピールするため信金と連携する道を模索するだろう。
もちろん、NPO化の推進は容易なことではない。行政による法制や税制などの環境整備は不可欠だが、何よりも信金自身が変化しなければならない。社会や地域への貢献も尺度に加えた融資の判断は、従来の融資よりも一段と難しい。社会貢献への使命感を持つ退職金融マンの活用などで人材面の強化を行うことが必要だ。
最も重要なのは、金利の事しか頭に無い出資者と顧客の意識改革、それを経営に反映させるための総代会などのガバナンスの強化である。これが一番の難問かもしれない。

◆出展:時事通信社「金融財政ビジネス」(平成23年1月17日号)より一部引用

 

僕は、「金融NPO」という言葉を、以前から知っていて、この考えをぜひ実現したいと思っています。
この記事のように「信用金庫」が「NPOバンク」的な方向へ舵取りをしていくのもありですし、新たなNPO法人や財団を作ったうえで取り組んでいくこともできるかと考えます。現状、手っ取り早いのは、新たな法人格を取ることですが、諸処の条件をクリアできれば、信用金庫の可能性がグッと広がることに気づかされました。

 
そう言えば、以前、認定NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんも書かれていた「出資型NPO」という可能性。
僕も、新しいNPO法人のカタチとして、信用金庫に近い(あくまで近い)NPOバンクの役割も果たせるうえに、独自の資金調達も容易にできるようになると思っています。

 

 
▼ この本、分かりやすくてよかったですよ!

 










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ABOUTこの記事をかいた人

愛媛県八幡浜市生まれ。山口大学卒。 高校時代に商店街活性化を目的にしたお店「AKIND」(あきんど)を開店したことがきっかけで、地元が大好きになる。 大学卒業後、帰郷し地域金融機関に勤める傍ら、八幡浜を元気にすることを目的にした「NPO法人八幡浜元気プロジェクト」の代表、ローカルWEBメディア「KITONARU」編集長などを務める。